第1回深部地质环境研究ー研究発表会讲演要旨....pdf

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第 1 回深部地質環境研究センター研究発表会講演要旨およびポスター発表概要 -631- 地質調査研究報告 , 第 53 巻,第 7/8 号 , p.631 - 633, 2002 第1回深部地質環境研究センター研究発表会講演要旨 およびポスター発表概要* 開会の挨拶, 深部地質環境研究センターの役割 小玉喜三郎1 当センターでは, 国が行う高レベル放射性廃棄物地層処分システムのう ちのいわゆる天然バリ アの性能評価や 安全規制に資するため, 科学的な根拠に基づいた最新の地質情報を提供する ことを ミ ッシ ョ ンに調査 ・ 研究を行っ ている. 本研究は主と して原子力安全 ・ 保安院による委託研究課題 「地層処分にかかる地質情報データの整備」 を中心と したものであるが, 当センターではその他に, 地下地質環境についての一般的研究や, 自然災害防止の ための緊急研究も運営交付金で実施している. ここでは, これらの研究のねらいと体制について紹介した. (1深部地質環境研究センター) Keywords Research Center for Deep Geological Environment, Mission, Nuclear waste disposal, Research target 地質変動の多様性と将来予測 山元孝広1 日本列島は世界有数の島弧変動帯にあり, 各種の地質 変動 (geodynamics) が活発である. 地質変動は地震 ・ 断層 運動, 火成活動, 隆起 ・ 沈降など固体地球自身の運動であ る. 将来十万年程度先のこれら地質変動を予測するために は, 過去百万年程度に遡った地質変動の履歴を地質学的 な研究から明らかにし, そこから将来予測手法を見いださな ければならない.(1深部地質環境研究センター) Keywords Geodynamics, Long-term future predic- tion, Japan 深部上昇流体 その性状と検出手法開発 風早康平1 地層処分システムの安全性評価に関する国の施策に資 するため, 地表水・ 地下水 ・温泉水 ・地下ガス ・ 溶存ガス等 に含まれる深部上昇流体の産状, 化学 ・ 同位体組成等の調 査を行った. モデル地域は近畿地方とし, 現地における詳 細調査結果等を用いて, 極微量の深部上昇流体の検出手 法を開発中である. 本発表では, 既存技術を用いた現地調 査等から明らかになった深部上昇流体の特性 ・ 産状等を示 すとともに, 今後, 新手法の投入予定により期待される評価 手法について示した.(1深部地質環境研究センター) Keywords Crustal fluid, Isotopic composition, Hot spring, Groundwater オフィオライ トの変形と流体移動 嶺岡オフィオラ イ トの新展開 小川勇二郎1 房総半島の嶺岡オフ ィ オライ トには, 熱水変質と変形の数 段階のステージを示す良好な露頭があり, 今回, その構造 地質学的データを整理し, 変形様式, 応力軸方位, テク トニ クス上の意義を論じた. ステージごとに, 玄武岩質岩体 (斑 レイ岩, ドレライ ト, 3種の玄武岩枕状溶岩) に, 特徴的な破断 や断層が発達し, それらの多く は, 差応力や間隙水圧の増 大 ・ 減少で議論でき, 流体移動が繰り返したことが分かる. 初期の変形シリーズでは, 溶岩の層理を水平に戻すと, 正 断層と水平ずれ断層が卓越し, それらにカルサイ トおよびゼ オライ トが伴う. ある種の断層は, カタクレーサイ トで特徴づ けられ, 別の断層は, ハイ ブリ ッ ドエクステンシ ョ ン ・ シアで特 徴づけられる. 2番目の変形シリ ーズは, 脈鉱物の生成を伴 わず, リ ーデルシアで特徴づけられるシアゾーンが顕著であ り, 右ずれ成分を持つ逆断層によって, 異なる起源の岩体 同士が接する. これらの2つのシリーズは, それぞれ拡大軸 とオブダクシ ョ ンに相当すると解釈される.(1筑波大学地球 科学系) Keywords Mineoka ophiolite, Tectonic deation, Fluid flow 岩のせん断変位と流体移動特性について 高橋 学1 岩のせん断変位と力学特性および透水係数等の流体移 *平成14年6月26日 産業技術総合研究所つく ばセンター中央 第7事業所C3C-211 (別棟大会議室) において開催 地質調査研究報告 2002年 第53巻 第7/8 号 -632- 動特性に関する実験データは, その重要性が指摘されてい ながらも世界で極限られた数しか報告されていない. 力学 特性および透水特性の同時測定上の制御の難しさにその 原因があると思われる. 地質調査所時代から蓄積されてき た三軸および真三軸応力条件下で得られた砂岩の変形・ 透水実験データを紹介し, 亀裂の生成と透水係数との関連 や, 亀裂のみの透水係数の評価等について発表した.(1深 部地質環境研究センター) Keywords Shear displacement, Permeability, Me- chanical characteristics 地質特性変化に関するデータ基盤の整備 渡部芳夫1 多様で大量な地質情報をデータベース化し, これを利用 して地質構造の解析やデータ値の相関関係等を処理する システムは, 地層処分に係わるデータを的確に整理したり, 活用するために重要かつ不可欠である. これらの実現に向 けて, 以下の4段階の整備を行っている. まず地質データの 収集と要素データベースの整備, これらの要素データベー スの統合化による地質環境データ基盤の構築, このデータ 基盤を利用した各種情報処理システムの開発, そして情報 発信技術の開発とこれによるデータ基盤の提供 ・ 公開であ る. 今回は, 第1段階の整備状況を概報した.(1深部地質環 境研究センター) Keywords Geological environments, Geological data, Data base, Knowledge base 水文調査と水文環境図類の整備 安原正也1 日本各地において, 天水 (降水 ・ 河川水 ・ 湖水 ・ 湧水・地 下水) の性状の現状把握, ならびに地下水の涵養 ・ 流動プ ロセス (涵養源 ・ 涵養地域 ・ 主涵養期 ・ 滞留時間等) の解明 に関する水文学的研究を実施している. 水質や各種同位 体組成に基づく関東 ・ 甲信越地方, 神戸市街地, 秋田県六 郷扇状地, さ らには各地の火山における水文調査研究の現 状と, 水文環境図類の整備へ向けた取り組みを紹介した. (1深部地質環境研究センター) Keywords Hydro-environmental map, Geochemical mapping, Groundwater, Surface water [ポスター発表] 阿武隈花崗岩中西部地域の地形 ・地質学的研究 塚本 斉1・ 亀井淳志1・ 高木哲一1・ 遠藤秀典2 福島県に分布する阿武隈花崗岩とその被覆層を対象 に, 地形 ・ 地質 ・ 断裂系に関する諸要素の特徴 ・ 分布 ・ 構造 等を示す. また, 断裂系調査の一環と して行われた花崗岩 類を対象とした弾性波 トモグラフィ ー ・気泡ボーリ ングの解 析結果を示した.(1深部地質環境研究センター, 2企画本 部) Keywords Abukuma granite, Fracture analysis, Lin- eaments, Seismic tomography, Stiff-foam drilling 福島県奥会津地域の地熱システム 関 陽児1・住田達哉1 奥会津地熱系の層序, 地質構造, 温度構造, 変質帯分布 等を総括するとともに, 新たに熱水性鉱物の流体包有物均 質化温度等を測定した結果, 活動開始直後にはその深部 と地表との水理的連絡が良好であった系が, 熱水変質によ り難透水帯が形成されることにより, その上部と下部とが水 理的にも温度構造的にも分離してきた過程が明らかになっ た.(1深部地質環境研究センター) Keywords Okuaizu geothermal system, Hydrother- mal alteration, Thermal structure, Hydrogeology, Fluid inclusion homogenization temperature 草津白根山の重力探査 牧野雅彦1・渡辺史郎1・小川康雄2 草津白根山の山頂付近で重力探査を行い, 直径2㎞の 低重力異常を検出した. この低重力異常の中心は湯釜の 北東に位置し, 火山活動で観測された火山性地震や全磁 力変化の位置に対応する. 重力モデル計算によると, 水釜 付近を中心とする直径2㎞, 深さ200mの漏斗状陥没構造で 観測重力異常を説明できる. また, 本白根山・横手山は高 重力異常で, 高い密度の岩体で構成されていることがわ かった.(1深部地質環境研究センター, 2東京工業大学) Keywords Gravity, Summit collapse, Density 雲仙火山科学掘削計画における雲仙火山噴出物 のK-Ar年代測定 松本哲一1・星住英夫2・宇都浩三2 雲仙火山科学掘削計画の山麓および火道パイ ロッ ト掘 削で採取された3種類のボーリ ングコア (USDP-1,-2,-3) と 雲仙火山を起源と し地表に露出する溶岩流および火砕堆 積物について系統的なK-Ar年代測定を行った. ボーリ ング 第 1 回深部地質環境研究センター研究発表会講演要旨およびポスター発表概要 -633- コアの岩石学的記載と年代データから各掘削サイ ト周辺に おける雲仙火山の活動史を推定するとともに, ボーリ ングコ アと地表噴出物の年代データから雲仙火山全体の噴火史 について再検討を試みた.(1深部地質環境研究センター, 2地球科学情報研究部門) Keywords Unzen Volcano, Scientific Drilling Project, K-Ar age determination, Boring cores 深部上昇流体 その起源, 実態および検出手法開 発と応用 高橋正明1・ 風早康平1・ 高橋 浩1・ 森川徳敏1・ 島田幸子1 深部上昇流体の起源には, マグマ, スラブ脱水, 第三系 ~第四系中の化石水等が考えられる. 深部地質環境の安 定性の理解には, これらの形成機構, 空間的分布, 地球化 学的性状等を解明する必要があるにもかかわらず, 大部分 が未解明である. 本発表では, 地質データ ・ 化学成分 ・ 水素- 酸素同位体等を利用した解析の有効性を議論し, 新しくヘ リ ウムや炭素同位体を用いた深部上昇流体の検出手法の 開発を行い, マルチ ト レーサーによる解析を試みた結果を 示した.(1深部地質環境研究センター) Keywords Crustal fluid, Hydrogen and oxygen iso- tope, He isotope, Carbon isotope 岩の力学 ・透水挙動に関する計測-H13年度成果 高橋 学1・ 張 銘1・ 成田 孝1・ 冨島康夫1 当チームは岩の力学・透水連成挙動の解明に資するた め以下の研究に取り組んだ. 1) 温度 ・ 応力環境下における 地層特性変化を把握するため, 最大200℃までの環境下で 正確に動作する変位計測システムを立ち上げる. 2) 地殻変 動等の要因が地層の流体移動特性に及ぼす影響を評価 するため, 模擬試験装置を新規導入する. 3) 透水性・貯留 性を評価するため, 連続等方媒体の貯留項を含む厳密解 に基づいて, 従来の手法による誤差の要因や程度を明らか にした.(1深部地質環境研究センター) Keywords Mechanical and hydraulic behavior of rocks, High temperature deation, Permeability test 岩石風化土壌中の微量元素の挙動-八溝山地南部 の例- 上岡 晃1・ 金井 豊1・ 関 陽児1・ 月村勝宏1・ 濱崎聡志1・ 中嶋輝允1 茨城県の八溝山地南部において, 中・古生代 (八溝層 群) の堆積岩, 古第三紀の加波山花崗岩, 第三紀の凝灰岩 等の風化土壌を採取し, 中性子放射化法によって微量元 素を中心とする分析を行った. 粒径1-2mmから2μs以下ま での6つの粒度フラクシ ョ ンに分離した土壌について, 粒度 毎の化学組成の特徴を調べた. また, 土壌のバルク化学組 成を土壌採取地点付近で採取した源岩と比較することによ り, 岩石風化における元素の移動を検討した.(1深部地質 環境研究センター) Keywords Soil, Trace element, Yamizo mountains, Grain size, Neutron activation analysis 地下微生物の環境に与える影響に関する研究 三田直樹1・竹内理恵1・金井 豊1 核種移動を規制する地質特性変化因子の中で, 化学環 境に地下微生物が与える影響を系統的に検討するため, ま ずマンガン酸化細菌と藻類の調査を開始した. 閉鎖環境の 凝灰岩表面に生じた二酸化マンガンは強い活性のマンガ ン酸化細菌を含み, 細菌が劣悪環境下で耐乏して好条件 で増殖することを示唆した. 地下水はMn やFeのイオンを 高濃度に含有することが多く, 微生物は排水溝を詰まらせ たり壁面歪み等の悪影響を及ぼす可能性がある.(1深部地 質環境研究センター) Keywords Environment, Underground, Microbe, Manganese 阿武隈地域における地下水の起源と流動系に関す る研究 稲村明彦1・安原正也1・吉川清志1・ 間中光雄1・風早康平1・高橋 浩1・ 森川徳敏1・牧野 雅彦・遠藤秀典2 地下水チームでは, 阿武隈花崗岩地域を対象に, 地下水 の起源と三次元的流動系, および地下水流動に及ぼす断 裂系の影響を明らかにするため, 河川水や浅層地下水等 の天水について高密度調査を実施している. 一般水質, 安 定同位体組成を分析した結果, 当該地域の岩種は比較的 単純であるにもかかわらず, それぞれ複雑な濃度分布を示 すことが明らかになった. 表層地下水系への人為汚染や断 裂系を通してもたら された深部地下水の混入等の要因も考 慮しながら, 本地域の地下水の起源と流動系について考察 した結果を紹介した.(1深部地質環境研究センター, 2企画 本部) Keywords Groundwater, Water chemistry, Stable iso- topes, Abukuma area
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