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- 1 - 1. はじめに 我が国における,超高層の先駆けとなった建築物は, 霞ヶ関ビル(1968 年)といわれている。コンピュータの解 析技術の発達によって設計法が進化し,超高層を実現する 土壌が整備されたことが大きいが,鋼材メーカーにおける 鋼材の性能や価格,加工面における改良が超高層実現に貢 献している。これ以後,大都市を中心に超高層オフィスビ ルなどが次々と建設されていくが,その耐震構造として, 比較的軽量で強度が高く,粘り強い鉄骨造が主流となって いる。 近年,都市部を中心に建設される高層建築物では,大ス パン化や商業スペース,オフィスおよびホテルの重層化な ど,構造の複雑化が特徴として見られる 1。このため,高 強度の厚肉鋼材が求められている。一方,1995 年兵庫県南 部地震における梁端接合部の破断被害などから,建築鉄骨 に降伏比(降伏点/引張強さ)が低く,靭性が高くかつ溶 接性の良い高性能鋼材の必要性も高まっている 2。さらに 性能照査型設計法の導入により,要求される性能に見合っ た多種多様な鋼材および高品質化,鋼材の特性を有効に引 き出す溶接技術も重要になりつつある。 JFE スチールは,業界最高水準の高精度・高冷却速度を 誇る TMCP(thermo-mechanical control process)技術 3 を駆使して,厚板・H 形鋼・鋼管を市場に提供し,高層建 築物の多様化する設計・施工ニーズに対応してきた。 以下に超高層建築物用として使用されている JFE スチー ルの鋼材について,その特徴と適用例を紹介する。 2. JFE スチールの製品開発と適用事例 2.1 高性能鋼材 2.1.1 550 N/mm2TMCP 鋼材(HBL385) 経済性,耐震性,溶接性のバランスに優れた高張力鋼材 として,JFE スチールは引張強さ 550 N/mm2級の TMCP 鋼板 HBL385 を開発し 4,業界の先陣を切って 2002 年に国 土交通大臣認定を取得した。HBL385 は,JFE スチール独 自の加速冷却装置である Super-OLAC を活用した高精度 TMCP 技術を駆使することによって,従来の 520 N/mm2 級 TMCP 鋼(基準強度 355 N/mm2)と同等の溶接性を保 持したまま,80%以下の低降伏比と 385 N/mm2の基準強 度を実現したものである。現在,590 N/mm2級鋼(SA440) 以上の強度レベルの鋼材では,低降伏比を達成するために は,2 相域焼入を含む 2 回以上の熱処理を必要とする。 HBL385は,このような複雑な熱処理なしに,TMCPによっ て低降伏比を実現した最高強度レベルの鋼材である。 HBL385 の化学成分範囲と機械的特性をそれぞれ表 1, 2 に 示す。 超高層ビル向け建築構造用鋼材の概要と適用例 Overview and Application of Steel Materials for High-Rise Building 石井 匠 ISHII Takumi JFE 技研 土木・建築研究部 主任研究員 (課長) ・博士 (工学) 藤沢 清二 FUJISAWA Seiji JFF スチール 建材センター 建材技術部 主任部員 (副課長) 大森 章夫 OHMORI Akio JFE スチール スチール研究所 厚板・形鋼研究部 主任研究員 (課長) ・博士 (工学) 要旨 JFE スチールは,業界トップレベルの TMCP(thermo-mechanical control process)技術を駆使して,厚板・H 形鋼・鋼管を市場に提供し,高層建築物の多様化する設計・施工ニーズに対応してきた。本報では,超高層建築 物用として使用されている JFE スチールの鋼材について,その特徴と適用例を紹介する。 Abstract JFE Steel has been producing plates, wide fl ange H-shapes and pipes by applying thermo-mechanical control process TMCP technology using the most advanced on-line accelerated cooling system in order to meet customers’ needs while considering various design s and construction technologies for high-rise buildings. This paper introduces the overview and application of representative JFE Steel’s steel products for high-rise building. JFE 技報 No. 21 (2008 年 8 月)p. 1–7 2008 年 5 月 9 日受付 超高層ビル向け建築構造用鋼材の概要と適用例 - 2 -JFE 技報 No. 21(2008 年 8 月) HBL385 の採用により,高強度化による鋼材重量の削減, 鉄骨加工・溶接工数の低減などから,鉄骨コストのミニマム 化が期待できる。その効果を定量的に評価するため, 490 N/mm2級 TMCP 鋼(TMC325)を HBL385 に置換す る試設計により鋼材重量を見積もった。 試設計の対象は図 1 に示す高さ 122 m,25 階建ての超高 層建築物とした。平面は整形であり制振ダンパーを配して いる。柱の断面形状は箱形断面(以下,BOX) ,H 形断面, 円形断面 CFT の 3 種が使用されている。 表 3 に原設計で使用されている最大断面を示す。試設計 では,部材を強度比により断面置換し,置換後の建物性状 を確認した。部材の置換は Case 1 が梁,Case 2 が柱, Case 3 が梁と柱,Case 4 が 10 階以下の梁と柱とし,計 4 ケースとした。置換に際しては断面のせいおよび幅は変え ず厚さのみ(梁 H 形鋼はフランジのみ)を強度比で変更し た。 試設計後の鋼材重量を表 4 に示す。原設計に対する全体 の鋼材重量は,Case 1 で 4.3%,Case 2 で 2.6%,Case 3 で 6.9%,Case 4 で 4.3%減となった。部材別に着目すると, 柱を置換すると原設計に対して 6%減,梁を全層にわたり 置換すると10%減,10 階以下で置換すると4%減となった。 各 Case の建物の一次固有周期を表 5 に示す。原設計と 比較し,梁を置換する Case 1 および 3 は増大,柱置換の Case 2 はほとんど変化がない。10 階以下の柱梁を変更した Table 1 Chemical compositions of HBL385 mass ThicknessCSiMnPSCeqPCM* HBL385B 19t50 0.200.551.600.0300.015 0.400.26 50t1000.420.27 HBL385C 19t50 0.200.551.600.0200.008 0.400.26 50t1000.420.27 Ceq CSi/24Mn/6Ni/40Cr/5Mo/4V/14 PCM CSi/30Mn/20Cu/20Ni/60Cr/20Mo/15V/105B * 受渡当事者間の協定によって,PCMを Ceqの代わりに適用することができる。 表 1 HBL385の化学成分 Table 2 Mechanical properties of HBL385 Thickness YP N/mm2 TS N/mm2 YR El vE0˚C J RAZ HBL385B 19t100385–505550–67080 26 t50* 20 t50** 70 HBL385C 25Ave. 15each YP Yield point TS Tensile strength YR Yield ratio El Elongation vE0˚C Charpy absorbed energy at 0˚C RAZ Reduction of area in Z-direction *JIS No. 5,**JIS No. 4 表 2 HBL385の機械的性質 Pipe H-shape H-shape Box Pipe Pipe Box Fig. 1 Building for trying to design 図 1 試設計対象建築物 Original designInterchange BOX-600 70 “TMC325”-600 60 “HBL385” H-shapeH-612 520 70 80“TMC325”H-592 510 60 70“HBL385” Pipe CFT-1 200 50“TMC325”-1 200 40“HBL385” Beam H-shapeH-1 500 400 16 40“SN490”H-1 500 400 16 32 “HBL385” Table 3 Maximum member section 表 3 最大部材断面 超高層ビル向け建築構造用鋼材の概要と適用例 - 3 -JFE 技報 No. 21(2008 年 8 月) Case 4 はその中間値となっている。一次設計時と二次設計 時の建物層間変形角を,原設計を 100%とし,図 2 に示す。 なお,二次設計は極希に発生する地震を想定している。梁 を置換した Case 1,Case 3 は上層階の剛性低下が顕著であ り,二次設計時に中間階から上層階の層間変形が原設計か ら 2 割以上増しクライテリアを満足できなくなっている。 柱を置換した Case 2 は十分に変更可能であり,10 階以下 を置換した Case 4 も設計条件を満足している。 本建物の場合,全層の梁を置換すると剛性低下が著しく, 性能確保が困難となる。柱を置換した Case 2 の場合,性能 は十分に確保されており,実用上問題がない。また Case 4 の 10 階 以 下 の 梁 置 換 も 同 様 で あ る。 試 設 計 で は, 490 N/mm2鋼柱を HBL385 に置換することは鋼重削減効果 を目指すことができ,性能確保の面でも問題がないといえ る。また,下層階のみであれば HBL385 を梁に適用するこ とは十分に可能である。 このような HBL385 の鋼重削減効果による優位性が評価 され,製造開始から 2007 年 3 月までに,約 40 件の建築物 に適用され累積出荷数量は 25 000 t に上る。一例として, 2007 年に竣工したグラントウキョウノースタワー(I 期) [階数 地下 4 階,地上 43 階,棟屋 2 階 最高高さ 約 205 m] (写真 1) ,グラントウキョウサウスタワー [階数 地下 4 階,地上 42 階,棟屋 1 階 最高高さ 約 205 m]の 超高層建築物において,5 000 t 超の HBL385 が BOX 柱と して採用されている。 2.1.2 高施工型 590 N/mm2鋼材(SA440-U) 従来の建築用 590 N/mm2鋼(SA440)は,炭素当量 Ceq や溶接割れ感受性組成 PCMが高く,予熱やビード長さなど に制約が多かった。高施工型 590 N/mm2鋼 (SA440-U) は, 溶接性を考慮した最適成分設計と特殊熱処理により,溶接 施工性を大幅に改善した鋼材である。PCMを 0.22 以下に制 限することによって,予熱温度の低減,あるいは板厚や拘 束条件によっては予熱省略が可能とした。また,炭素量低 減により,ショートビード溶接熱影響部の硬さ上昇を低減 した。従来型 SA440 と高施工型 SA440-U の化学成分を比 較して表 6 に示す。 SA440 は 1996 年に大臣認定を取得して以来,累積で約 40 000 tを出荷しており, その内SA440-Uも複数のユーザー にご使用いただいている。SA440 を適用頂いた代表的な超 高層建築物としては写真 2 に示す新丸の内ビルディング [地下 4 階,地上 38 階,高さ 198 m]がある。本建築物に は次節の大入熱対策鋼材も適用している。 2.1.3 大入熱溶接対策鋼材 四面ボックス柱には,高能率のサブマージアーク溶接 (SAW)やエレクトロスラグ溶接(ESW)が適用される。 これらの溶接は,入熱量が SAW で 600 kJ/cm,ESW では unitt Quantity of Steel OriginalCase 1Case 2Case 3Case 4 Total 9 607 100 9 194 96 9 356 97 8 943 93 9 190 96 Columns 3 881 100 3 881 100 3 630 94 3 630 94 3 630 94 Beams 4 190 100 3 777 90 4 190 100 3 777 90 4 024 96 Others 1 535 100 1 535 100 1 535 100 1 535 100 1 535 100 Table 4 Quantity of steel as a result of trying to design 表 4 試設計後の鋼材重量 First stage design Story Story Case 1 Case 1 Case 3 Case 3 Case 2 Case 2 Case 4 Case 4 80 1 5 10 15 20 25 1 5 10 15 20 25 10012080100120 Second stage design {Each case/Original}100 {Each case/Original}100 Fig. 2 Story drift 図 2 層間変形角 Table 5 Primary natural period as a result of trying to design 表 5 試設計後の一次固有周期 units Natural periodOriginalCase 1Case 2Case 3Case 4 X direction3.143.233.153.243.19 Y direction3.023.093.033.113.08 Photo 1 Gran Tokyo North Tower 写真 1 グラントウキョウノースタワー 超高層ビル向け建築構造用鋼材の概要と適用例 - 4 -JFE 技報 No. 21(2008 年 8 月) 最大 1 000 kJ/cm にもなる大入熱溶接であり,特別な対策 を施さない鋼材では溶接熱影響部(HAZ)の靭性が著しく 劣化する。 JFE スチールでは,大入熱溶接熱影響部靭性向上技術 「JFE EWEL」 5を適用した高HAZ靭性鋼板を開発してきた。 「JFE EWEL」 は, (1)Super-OLAC を 活 用 し た 高 精 度 TMCP 技術による低炭素当量(低 Ceq)化, (2)微細分散 TiN による γ 粒微細化, (3)マイクロアロイニング制御に よる γ 粒内組織制御, (4)溶接金属からの B 拡散を利用し た γ 粒内組織制御の 4 つの技術要素を統合させたものであ る。建築用鋼材としては,HBL325-E,HBL355-E,HBL 385-E,SA440-E のラインアップ(規格記号末尾の -E は 「JFE EWEL」が適用されていることを意味する。 )を商品 化している 6。これらは,国土交通大臣認定を取得した HBL325~385 および SA440 の各規格を満足し,さらに溶 接継手でも高いシャルピー吸収エネルギーを実現した鋼材 である。表 7 に基本的な機械的特性を示す。 また,溶接施工性については,通常の大入熱溶接対策を 施さない鋼材と比べて同等以上であり,同じ予熱条件での 溶接が可能である。SA440-E については,前項の高施工型 SA440B-U,SA440C-U と同等の溶接施工性を有する低 PCM 型 SA440-E を開発している。 2.2 厚肉高強度鋼管 2.2.1 高強度角形鋼管 「PコラムG385」 , 「PBCP440」 建築構造用柱材として,角形鋼管は幅広く使用されてい Table 6 Chemical compositions of SA440 plates 80 mm in thickness mass CSiMnPSCeqPCM Conventional 0.130.251.440.0120.0020.450.24 SA440C Spec.0.180.551.600.0200.0080.470.30 Developed 0.090.251.50.010.0020.460.2 SA440C-U Spec.0.120.551.600.0200.0080.470.22 Ceq CSi/24Mn/6Ni/40Cr/5Mo/4V/14 PCM CSi/30Mn/20Cu/20Ni/60Cr/20Mo/15V/105B 表 6 SA440(板厚 80 mm)の化学成分 Photo 2 Shin-Marunouchi Building 写真 2 新丸の内ビルディング Table 7 Mechanical properties of steel plates and welded joints with JFE EWEL.80mm in thickness Grade Base material YP N/mm2 TS N/mm2 YR El* vE0˚C J HBL325-E325–445490–610802127 HBL355-E355–475520–640802127 HBL385-E385–505550–670802070 SA440-E440–540590–740802047 YP Yield point TS Tensile strength YR Yield ratio El Elongation vE0˚C Charpy absorbed energy at 0˚C *JIS No. 4 表 7 JFE EWEL鋼板を用いた溶接継手の機械的性質 1/α BCP23545 BCP325T45 BCP32545 BCR2950 BCR295 Press column SM490A Hot rolled column FA BOX SM490B BOX SN490B C50019-00-1 C50032-00-1 C50032-45-1 C50032-45-0 C60032-45-1 Cumulative ductility factor, η 0.5 0 20 40 60 80 100 120 140 160 11.5 Border of FA class Requirement for FA class 30 22.53 Fig. 3 Relationship between cumulative ductility factor, η and general width-thickness ratio, α 図 3 累積塑性変形倍率 η - 無次元化幅厚比 α 関係 超高層ビル向け建築構造用鋼材の概要と適用例 - 5 -JFE 技報 No. 21(2008 年 8 月) るが,超高層建築物等の大規模建築物用としては, 550 N/mm2,590 N/mm2冷間プレス成形角形鋼管「P コラ ム G385」 「PBCP440」 7 を JFE スチールと(株) セイケイが 共同開発している。P コラム G385 は建築構造用の円形鋼 管として独自の強度レベルである。図 3 に中央部に通しダ イアフラムを溶接した正負交番 3 点曲げ試験より得られた 径厚比と塑性変形性能の関係を示すが,溶接部で破断する ことなく十分な耐力と塑性変形能力を確保しており,従来 のプレスコラム BCP325 と比較し同等な性能を有している。 2.2.2 高強度円形鋼管「P-325/355/385/440」 円形鋼管は断面に方向性がなく,任意の角度で梁を取り 付けることができる。また,CFT 柱として使用すれば,鋼 管の拘束効果によりコンクリート圧縮強度の増加も期待で きるなど,経済性に優れた部材である。JFE スチールの建 築構造用高強度円形鋼管は表 8 に示す 4 種である。製造は, UOE またはプレスベンドによるが,所定の降伏比を満足さ せるため,径厚比 (D/t) に応じて成形方法を決めている 8。 2.3 H 形鋼 2.3.1 超大型外法一定 H 形鋼 建築構造物の高層化および大空間化にともなう構造部材 のさらなる大型化に対応すべく,ウェブ高さ 1 000 mm と 950 mm の大断面外法一定 H 形鋼「スーパーハイスレンド H1000 および 950 シリーズ」を開発した 9。現在 JFE ス チールが製造する外法一定 H 形鋼のサイズを表 9 に示す。 製造サイズは 311 サイズと国内最多サイズである。スー パーハイスレンド H は優れた形状寸法精度で製造され,厚 鋼板と同一の板厚系列のウェブおよびフランジよりなる熱 間圧延 H 形鋼である。その断面寸法は,厚鋼板を溶接組み 立てするビルトアップ H 形鋼と同一の形状とすることがで き,建設分野において経済施工の実現が可能である。 超高層建築物に適用した例として,写真 3 に電通本社ビ ルを紹介する。SHH の大型サイズを梁材に適用している。 2.3.2 極厚 H 形鋼 フランジ厚が 40 mm を超える極厚 H 形鋼は,厚鋼板を 溶接で組み立てるボックス柱に匹敵する大断面を有してお り,高層建築物の柱材として利用されている。これは, ボックス柱と比較して溶接箇所が少なく安全性の向上や製 造納期が短いなどの長所があるためである。 JFE スチールでは高層建築の柱材として,極厚 H 形鋼 700 500 シリーズを開発した 10。700 500 シリーズは先 行開発の TMCP 型極厚 H 形鋼(400 400,500 500 シ リーズ)と同等の高強度,高靱性かつ溶接性に優れた材料 特性を有しており,大断面化で強軸方向の断面性能が 2 割 程度増加する。各シリーズの断面積と断面係数の関係を図 4 に示す。柱材選択メニューの拡充が図れ,最適な柱断面 を選定することが可能である。 Table 8 Mechanical properties of steel pipes Grade Tensile test YP N/mm2 TS N/mm2 YR El* vE0˚C J P-325325–475490–610852327 P-355355–505520–640852127 P-385385–535550–67085 19 21 70 P-440440–590590–740852047 表 8 高強度鋼管の機械的性質 Photo 3 Dentsu Building 写真 3 電通本社ビル YP Yield point TS Tensile strength YR Yield ratio El Elongation vE0˚C Charpy absorbed energy at 0˚C * JIS No. 12A, No. 12B, or No. 4 Fillet size 13 mm 1000 19 16 19 16 19 16 19 16 14 19 16 14 16 14 12 16 14 12 9 16 12 9 16 12 9 16 12 9 16 12 9 12 9 12 1216 19 22 252816 19 22 25 28 32 3616 19 22 25 28 3236 22 25 2832 3640 22 2528 323640 9 950 900 850 800 750 700 650 600 550 500 450 400 200250300350400 Web Flange Fillet size 10 mm Table 9 Super Hislend H section table 表 9 外法一定 H形鋼サイズ表 超高層ビル向け建築構造用鋼材の概要と適用例 - 6 -JFE 技報 No. 21(2008 年 8 月) TMCP 極厚 H 形鋼を適用した建築物は約 15 件である。 適用する構造形式はチューブ構造の架構が多く,その一例 として写真 4 に示す堂島アバンザがある。 2.4 低降伏点鋼材 低降伏点鋼材は,低降伏点鋼制振ダンパー用に開発され た鋼材である。低降伏点鋼制振ダンパーは,地震によって 構造物に投入されるエネルギーを優先的に吸収し,構造物 の応答を低減する加工製品であり,1995 年兵庫県南部地震 以降,超高層建築物に標準的に取り付けられるようになっ ている。 JFE スチールでは表 10 に示す 4 種類の低降伏点鋼材を 揃えている。ダンパー製品としては JFE グループでは,ブ レースタイプ,部分壁タイプ,壁タイプの 3 種類の制振デ バイスを開発・販売している。ブレースは 2 種類であ り 11,12,心材にシームレス鋼管 JFE-LY100S,JFE-LY225S を用いた二重鋼管座屈補剛ブレースと,厚鋼板 JFE-LY100, JFE-LY225 から切り出した平鋼をブレース心材とし角形鋼 管で座屈補剛する鋼管補剛平鋼ブレースである(図 5) 。図 6 に従来の鋼管ブレースと制振ブレースの復元力性を比較 して示すが,制振ブレースは剛性・耐力共に圧縮・引張が 同等で安定した履歴特性と,高い塑性変形能力を有してい る。 2.5 溶接技術 建築物の大型化にともない,溶接施工面で高能率化が重 視されるようになってきている。 J-STAR Welding は,極性を従来の棒プラスに対して逆 の棒マイナスとし,適量の希土類金属(rare earth metal) を添加したワイヤを用いる CO2アーク溶接法である 13,14。 この溶接法は 250 A 以上の高電流溶接においてワイヤ先端 を頂点とする円錐状のアークプラズマを形成することで, ワイヤ先端から溶融池へ移行する溶滴が微細かつ連続化し た微細スプレー移行を達成し,従来比 1.5 倍の深い溶込み が得られる。この特性を利用した狭開先溶接について検討 し,I 形 -Gap5 mm およびレ形 25˚-Gap2 mm の高能率溶接 施工技術を確立している。また,この狭開先溶接を適用し Photo 4 Dojima Avanza 写真 4 堂島アバンザ Table 10 Mechanical properties of low yield strength steel Grade Plate /Pipe Tensile test YS N/mm2 TS N/mm2 YR El* vE0˚C J JFE-LY100 Plate 80–120200–300605027 JFE-LY225205–245300–400804027 JFE-LY100S Pipe 80–120200–300605027 JFE-LY225S205–245300–400803527 表 10 低降伏点鋼材の機械的性質 YP Yield point TS Tensile strength YR Yield ratio El Elongation vE0˚C Charpy absorbed energy at 0˚C *JIS No. 5 700 500 series 500 500 series 400 400 series H-770 520 70 80 H-612 520 70 80 1 200 000 1 000 000 800 000 600 000 400 000 200 000 0 H-608 477 90 125 H-418 402 15 30 2004006008001 0001 2001 4001 600 H-492 465 15 20 H-670 475 25 30 Moment of inertia, Ix cm4 Area, A cm2 Fig. 4 Relation between area and moment of inertia 図 4 断面二次モーメント - 断面積関係 a Tube-in-tube typeb Flat-bar type Fig. 5 Energy dissipative brace 図 5 制振ブレース 超高層ビル向け建築構造用鋼材の概要と適用例 - 7 -JFE 技報 No. 21(2008 年 8 月) た柱 - 梁継手は載荷試験において十分な変形能力を有して いることが確認されている。 3. おわりに 高炉メーカーとして,常に時代の設計法に合った新しい 高性能鋼材を開発・供給していく必要がある。かつて 1981 年の新耐震基準制定後,約 10 年間の定着期間を経て,塑 性設計に対応した鋼材のニーズが高まり,新しい建築構造 向けの規格が生み出された。SM(溶接構造用圧延鋼材) を発展させたものとして SN(建築構造用圧延鋼材) ,STK (一般構造用炭素鋼管)を発展させたものとして STKN(建 築構造用炭素鋼管) ,STKR(一般構造用角形鋼管)を発展 させたものとして BCP(建築構造用冷間プレス成形角形鋼 管) ・BCR(建築構造用冷間ロール成形角形鋼管)といっ た新しい規格である。 2001 年の建築基準法の改正により, 「性能規定」が盛り 込まれ,建築分野でも徐々に性能規定型設計に移行してき ている。ある一定の性能を満たせば建物に採用する材料の 種類や構造方法を問わず適とする考えである。したがって, 従来の建物のどこに使用しても良いという画一的な規定に よる鋼材から,使われる部位によって鋼材仕様を適切に規 定した,性能特化型の鋼材の提案が求められる。 現在,経済産業省,国土交通省などが連携したプロジェ クト「革新的構造材料を用いた新構造システム建築物の開 発」が進行中である。このプロジェクトの中では 780 N 級 以上の高強度鋼を用いることを前提に,震度 7 弾性構造を 特長とする超高層建築を提案している。地震エネルギーを 制振デバイスで吸収し,高強度鋼の大きな弾性変形を生か した柱材を用いて建物を無損傷とする構造システムである。 本構造システムの実現に向け,まさに性能特化型の鋼材・ 部材の開発が必要不可欠であり,確実な接合技術の開発と 合わせて重要となる。 JFE グループは,これからも経済環境や技術動向を見極 め,複雑化する建築構造物に対応を図るために,今後も ユーザーニーズを的確に捉え,高品質の製品を積極的に開 発・提案していく考えである。 参考文献 1) 稲田達夫,小川一郎.CAMP-ISIJ.2003,vol. 16,p. 340–343. 2) たとえば,日本建築学会構造委員会鋼構造運営委員会.鉄骨の破断現 象はどこまで解明されたか.2000 年度日本建築学会大会(東北)構造 部門(鋼構造)パネルディスカッション資料. 3) 鹿内伸夫,三田尾眞司,遠藤茂.JFE 技報.2007,no. 18,p. 1–6. 4) 林謙次,藤沢清二,中川一郎.JFE 技報.2004,no. 5,p. 45–50. 5) 鈴木伸一,一宮克行,秋田俊和.JFE 技報.2004,no. 5,p. 19–24. 6) 木村達巳,角博幸,木谷靖.JFE 技報.2004,no. 5,p. 38–44. 7) 猪砂利次ほか.日本建築学会講演梗概集.C-1.2002,p. 539–542. 8) 和田典巳.NKK 技報.1997,no. 157,p. 37–43. 9) 河村有秀,山本晃輝,今村晴幸.川崎製鉄技報.2001,vol. 33,no. 3, p. 128–131. 10) 三浦啓徳,藤沢清二,笹田幹雄.川崎製鉄技報.2001,vol. 33,no. 3, p. 132–136. 11) 藤澤一善,清水孝憲,上村健二.川崎製鉄技報.1998,vol. 30,no. 1, p. 1–6. 12) 伊藤茂樹ほか.NKK 技報.2000, no. 170,p. 67–74. 13) 片岡時彦,池田倫正,小野守章,安田功一.溶接学会講演概要集. 2004,第 75 集,p. 250–253. 14) 片岡時彦,池田倫正,小野守章,安田功一.溶接技術.2005,vol. 53, no. 3,p. 64–69. 石井 匠藤沢 清二大森 章夫 a Braceb Energy dissipative brace ε ε P/Py P/Py 2 1 0 1 2 2 1 0 1 2 2101221012 Fig. 6 Comparison of hysteresis loop of brace 図 6 復元力特性の比較
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